末端ゲーム開発者のゲーム備忘録

末端ゲーム開発者がゲームを分析する目的でレビューを書いているようだ。

ReCore: Definitive Edition

ゲーム概要

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人類は、地球でアウトブレイクが起きたことによる滅亡の危機から逃れるために、ファーエデンと呼ばれる惑星をテラフォーミングすることで生存しようと考えた。

そしてその作戦を担う精鋭の一人、主人公のジュールを操るTPSアクションとなっている。

プレイ感覚が類似するゲームとしては、ラチェットアンドクランクなどが思い浮かぶ。

 

Xbox GamePassでプレイしており、問題なく日本語化されていた。

クリア時間はかなり寄り道をしながらで20時間程度。

ストレートにクリアすれば12~3時間程度のボリュームだろうか。

 

感想

かなり辛口になってしまうが、あらゆる点において秀でたもののない、やや低水準なTPSという印象だった。

まず真っ先に感じたのは、予算の都合。

スタッフはメトロイドプライムの開発陣ということで期待していたが、どう見ても予算がメトロイドプライムの何分の1もなく、随所に妥協の跡が見受けられた。

定価が2000円程度ということから考えると、演出やモデルなど頑張っている感じはあるのだが、どう見ても予算を考えてないスケールのゲームだと言わざるを得ない。

目指している先にはフルプライスゲームのリッチな体験がおぼろげに見えるのだが、予算という現実が壁となっている。

 

また、このゲームが独自に持っているシステムは漏れなく欠点を抱えていることも残念。

良いところは翻訳がちゃんとしていることと、明らかにつまらないと言うほど壊れたゲームではないということか。

翻訳

翻訳はとても良かった。SFという題材であっても用語やダイアログにも破綻がなく、よく出来ていた。

バトル

一言で表すと、爽快感のなくなったラチェクラ

TPSの基本を守ってはいるため、つまらないほどでもないのだが、なにせ面白くもない。

なぜ爽快感がないのかと言うと、幾つかの理由が挙げられる。

 

・武器の種類が1種類しかない(色は変えられるが、武器自体は変わってない)

・綱引きがテンポを殺している上に、報酬的にもデメリットを抱えている。

・敵のバリエーションが5種類くらいしか無い

・武器の色を変えて戦うシステムが完全に無意味

 

まず上記をみてわかるのは、非常に単調なゲームプレイを強いられるということだ。

少ない敵の種類に、たった一つの武器で最初から最後まで戦わなければいけない。

スナイパーライフルだとか、ショットガンだとか、そんな小洒落たものはない。あるのはアサルトライフルだけである。

一応チャージショットには3種類あるが、使い分けに全く意味がないのでノーカウントである。

 

そして単調なゲームプレイから爽快感も奪い去るシステムが「綱引き」になる。

「綱引き」とは敵ロボットのHPをある程度減らし時にコア引き抜くことでフィニッシャーを行えるシステムなのだが、フィニッシャーを行うとコアVS主人公の綱引きが始まるため「綱引き」と呼ばれている。

まずフィニッシャーの演出が長いだけで敵からの攻撃などデメリットが多く不評を招くにも関わらず、ミニゲームまでやらせた上、別に無敵でもなく攻撃を食らうというのは、なにかの冗談かと思った。

しかもコアを取ってしまうとアイテムドロップをしないため、コアを取ることが100%の旨味でもないというのも意味不明。

こんだけ苦労しているのに報酬面でもデメリットがあるって、嫌がらせなのだろうか。

 

そして極めつけは武器の色を変えて戦うシステムだ。

簡単に説明すると、武器の色を敵に対応した色(同じ色)にすると、より多くのダメージを与えられるというシステムになっている。

色は青、黄、赤とあってそれぞれ青は痺れ、黄は鈍速化、赤は炎上と状態異常やステータスに違いがあるのだが、当然同じ色に合わせて戦うため使い分ける意義がほとんど感じられない。

 

他にも攻撃を食らうと怯みが発生してハメられる時があるとか、状態異常が鬱陶しい上にテンポまで損なっているとか、枚挙に暇がないのだがキリが無いので次に移ろうと思う。

システム

バトルにも言えることなのだが、細かい部分のストレスが無限にある。

だが「ここは面白いな」と思う部分は何一つ無い。普通かそれ以下しかないのだ。

 

マップがひたすらだだっ広いだけで面白くないとか、破壊可能オブジェクトから出るおアイテムの吸い寄せ判定が入るまで異様に長いとか、ダッシュが壁に当たると怯みが発生してアクションにストレスがあるとか……言いたいことは本当に尽きないのだが、コレはないだろと思うものに焦点を絞らせてもらう。

 

・バディが2体までしか連れ歩けない

・クラッシュやバグが意外とある

 

このゲームをやっててストレスしか感じなかった要素、それがバディは2体までの制限だ。

メトロイドプライム開発班ということもあって、メトロイドヴァニアな探索要素が散りばめられているのだが、探索には必ずバディの力が必要になるよう設計されている。

つまり探索要素を探索するには、現地に向かう→必要なバディを調べる→一度セーブポイントへ帰ってバディを変更→また探索地点へ向かう→探索という一つの地点を探索するだけで膨大な手数を無意味に求められる。

しかも探索ポイントは数十以上ある。上記の行動を数十回繰り返すのははっきり言って苦痛以外の何物でもない。(当然連れているバディで対応できれば戻る部分は短縮できるが)

想像してみてほしい。メトロイドをプレイしているときに探索するために一々セーブポイントで装備を付け替えて、探索するを繰り返す姿を。

全くもって非効率的すぎて、掛け算をわざわざ足し算で解いている錯覚に陥る。

 

この問題はハッキリ言って、ゲーム設計が完全に間違っている

ではなぜこんなイカれたシステムが爆誕したか推察すると、バディとの共闘システムが足を引っ張っているからだと考える。

このシステムではバディに指示を出すことで回数制限のあるスキルを使わせることができる。

問題はこのスキルがそれなりに火力を出せるため、乱発されるとそれだけ出してればクリアできるというゲームになってしまう点だ。(実際はそれだけでは面倒だろうが、やろうとするユーザーが出てきてしまうということだ)

それを防ぐために開発が取った行動が、バディの数を制限することで乱発させないということになる。

せめてバディ付け替えがどこでもできればもう少しマシだったが、これも上記の問題のせいだろうか、セーブポイントでの付け替えという最悪のシステムで行われている。

 

更にゲームプレイ中のストレスに拍車をかけるのがバグとクラッシュの存在だ。

バグは単純に完成度が低いゆえに起こる一連のバグ全てが起こりうる。

 

遭遇したものだと、敵が壁や天井にめり込んで帰ってこない、パズルの解く順序を123でなく213と解いてしまったがために進行不能に陥る、フラグが成立してないのに扉が空いているせいでアイテムが消えている……などだ。

(他にもマップ外へ侵入できるマップがあるとか、デバッグまがいの話もあるのだが、これは意図的に狙わなければ問題にならないので良しとする。)

 

これらはシンプルにデバッグ不足の代物にほかならないため、純粋に完成度がやや低い、と結論付けざるを得ない。

特にパズルの順序に関してはプログラムのバグではなく、パズルの完成度が低いだけなので、より残念。

 

 

シナリオ

SFということだが、人類を滅亡へ追いやる疫病の名前がデビルダスト病とか、なんかダサい。

ロボットが機械音しか喋ってないのに、めちゃくちゃ普通に意思疎通して話しているのは不思議な光景だけど、本筋も特筆するべき部分はない普通の物語。

ただバッドエンドという程ではないが、ハッピーエンドでは無いため気分良くゲームを終わりたい人はあんまりおすすめできない。

 

グラフィック

PS4初期程度の品質だろうか。

きれいだとは思うのだが、予算の都合か随所にツメの甘さが残っている感じ。

 

ラストダンジョン

なぜこんな項目があるのか?それはこの項目がこのゲーム最大最悪の欠点だからだ。

ラストダンジョンでは紛れもない予算切れと工数切れを起こしており、そこで取った行動がまさかの汎用のアセットを使いまわして異常に長い単調なダンジョンを作るというものだったということだ。

愕然としたここまで清々しいほど省エネなラストダンジョンがあるのかと。

単なる板だけで構成されたダンジョンを、なんと5階層分もやらねばならない。

1階層の長さですら、今までの長めダンジョンと同等の長さだ。それを5回繰り返すのだ。

その間やることは本当に、誇張なしに全く変わらない。

アスレチック→戦闘→アスレチック→戦闘→アスレチック これがワンセット。それを5回繰り返せばラストダンジョンはクリアとなる。

まさか最後にこんな爆弾が潜んでいるとは。もうゲーム作るの飽きちゃったのかなと心配にすらなる。

総評

後々自分で見返したときに分かりやすいように、総評には5点評価で何点だったかを書いていこうと思う。

評価はクリア、もしくは断念した時点でのものになる。

ということで、こちらのゲームの評価は……

 

点!

 

実はラストダンジョンをやるまでは、3点くらいを考えていた。

欠点が多い作品だったが、フルプライス級ゲームの体験を目指している志の高さは伺えており、随所で足らない部分も目につくが、それでも及第点にはギリギリ届いていると思っていた。

だが、その幻想はラストダンジョンが見事に打ち砕いた。いや、ラストダンジョンに差し掛かったとき開発の幻想が打ち砕かれたのだろう。

それは予算なのか、スケジュールなのか、軌道修正不可能なゲームの底の浅さに気づいてしまったのか。真実はわからない。

ただ言えることは、この作品はこれ以上お金をかけてもペイ出来ないとラストダンジョンで開発は気づき、手抜きで仕上げたということだ。

ビジネスなので仕方ないことかもしれないが、消費者からすれば全く関係ない。

僕がプレイしたのは、史上最低の、5回コピペを繰り返しただけかのような薄っぺらなラストダンジョンだったのだ。

これをプレイして及第点とは口が裂けても言えなかったので、2点となった。

 

あとがき

またまたXbox GamePassでのプレイ。

普通は買わなそうな作品もプレイできるので、サブスクは偉大だ。

今の開発というのは数億円規模はやや低予算と言えるほどお金がかかるのが現状で、それ故にたった1ヶ月開発を伸ばしますという決断がかなりの経済的な打撃になることも知っている。

僕も数億円という、潤沢ではない資金でのプロジェクトでコンシューマーゲームを開発したことがあるため少し気持ちはわかる。

だがそれでも、ユーザーの目線を忘れてしまっては本末転倒なので、今回のゲームは良い反面教師になるなと思った。

というかそもそも、プランニングの段階でどこまで作るとかは決めてるはずなので、ラストダンジョンがああなったってことは開発が遅れて資金を圧迫したのかなあ。

メトロイドプライム開発という輝かしい実績のあるスタジオでも、やっぱり資金という最大の敵には抗えなかったということだ。