ドラゴンクエスト11S 過ぎ去りし時を求めて
言わずとしれた日本を代表するRPGの一つであるドラゴンクエスト。
その30周年を記念して圧倒的なボリュームで紡がれるのが本作だ。
スタイルは変わらず伝統的なJRPGだが、随所にやりやすくなった調整が施されており、歴代でも屈指の名作になっている。
特徴的なのはドラクエ8以来となるデフォルメではない、高い等身での3Dグラフィックと、圧倒的なボリュームだ。
Xbox GamePassでプレイしており、当然日本語対応。
クリア時間は裏ボスまで込で9割程度クエストなどもこなして140~150時間程度。
クエスト全クリやボイスドラマ、結婚イベントのようなやりこみまで含めれば更に10時間以上のボリュームは優にあるだろう。
感想
まずは筆者のプレイ歴をお伝えしよう。
DQ(ドラクエ)プレイ歴はナンバリングは1,5,8,9となり、ジョーカーやテリーのワンダーランドもクリアしている。
ほかは漫画でロトの紋章やダイの大冒険を読了した経験から、平均的なDQプレイヤーくらいに知識はあるはずだ。
その上で、なぜドラクエ11が良いのか?というお話をしたい。
この2つは対を成すような構成をしていて、FFが革新・最先端とするならば、DQは伝統・古典となる。
戦闘システムの根幹はドラクエ1から変わらないし、演出やシナリオも堀井雄二氏が一貫して王道テイストで行っていることからもよくわかるだろう。
これはIPの姿勢として、すごく愛を育みやすいし、「ドラクエが好きです」とひとくくりにしやすくて非常にいいことだと思う。
でもそれ故にマイナス面もあって、最たる例がシステムの面倒な古臭さを捨てきれない部分が非常に多かったところだ。
特に以前から感じていたことがレベリングの面倒さで、パーティーメンバーはいつの間にか固定化されていたのが歴代作品だったように感じる。
そこを今作では、レベリング、エンカウント、スキル、パーティーメンバー・・・全ての要素に調整が施され、歴代で屈指の遊びやすさを誇っている。
ここがドラクエ11が多くの人々に愛される理由の一つじゃないかと考える。
近年はポケモン然り、モンハン然り、旧来の面倒な部分をバッサリと切り捨てて、腰を据えてのプレイが億劫で辛くなってきた中年層にも響くようなものが作られてきている。
ドラクエもその流れに見事乗りこなしたことが、世間でも大きな評価につながったのではないだろうか。
そんなドラクエ11を、次は要素ごとに分解して考えていこうと思う。
バトル
基本のシステムは従来から逸脱していないが、一番最初だけ全員の行動を選んで、以降は素早さ順に敵味方入り混じって行動が訪れるため、ターン制コマンドバトルとは趣が異なる。
行動ごとにウェイトのあるアクティブタイムバトル…というのが一番的確な表現ではあるが、なにか専門用語でビシッとこれを指す言葉があるのだろうか…
ともあれ、このシステムによって強敵との戦闘では敵の手順がいつ回ってくるかという部分でも緊迫感が生まれ、パーティーメンバーとの入れ替えも戦略としての幅を持つ良いシステムだ。
システム
多くの部分に現代的なテコ入れがされて遊びやすくなった本作。
まずプラス部分に触れていくが、特に大きな変化と言えるのがランダムエンカウントからシンボルエンカウントへの変更だろう。
ランダムエンカウントは歩いていると逃げ続けない限り、自動的にレベリングが行われるためシームレスに楽しめるという利点があったが、正直現実的には機能していなかったので面倒なだけだった。(安全地帯に抜けるまでの緊迫感を生む…という機能もあるかもしれないが、リレミトとルーラがある以上はほとんど形骸化しているだろう)
ではシンボルエンカウントにすれば良いという単純な話ではなく、敵と戦うか選択できてしまうシステムの中で「どうやってプレイヤーに適度にレベリングさせるか」ということになるのだが、ドラクエ11は敵の種類を地域ごとで完全に変えることで「こいつはどんな敵なんだろう?」という好奇心を利用して戦闘を行わせるという方向にシフトした。
はっきり言って、ものすごい量のリソースを使う仕様なのでドラクエならばこそできたことだが、これは大正解と言えるだろう。
逆にマイナス面もある。
ただこれは未だに古臭い仕様ということなので、刷新されたシステムについてではない。
それはキャラが持っているアイテムを移動させるのが異常に面倒ということだ。
ひとつひとつ選択して→渡す→渡す先を選んで~をやらなければならない。
まとめて渡すくらいできて当たり前だと思うので、ここは次回以降ぜひとも改善してほしい。
グラフィック
今作の見どころの一つ、それは美麗でデフォルメされていないグラフィックだろう。
Unreal Engineを使ったことで最先端のグラフィックを手に入れた本作は、ドラクエ8の根強いファンたちを大いに沸き立たせたはずだ。
実際プレイするとシンボルエンカウントとの相性が本当に素晴らしく、どでかい敵シンボルは直感的に強いとわかった挑むときもドキドキする。
今後もすべて…というと贅沢なので、定期的にこういったグラフィックで出してほしい。
シナリオ
本作の目玉であり、歴代最高傑作だと筆者が信じて疑わない理由だ。
その最大の驚きは、まさかラスボス(ウルノーガ)までの過程がただの壮大な「前フリ」に過ぎないことだ。
そこまでのプレイ時間は30~40時間は固いだろう。
キングダムハーツ2のロクサスですら、10時間あったかなかったかと言う中で、こんな前フリがあり得るのかというレベルだ。
だが間違いなく前フリに過ぎないとわかるのが、サブタイトル「過ぎ去りし時を求めて」だ。
それはウルノーガとの戦いによって生み出された数々の悲劇を無くすため、時を戻り、真のラスボス・ニズゼルファへ挑むのが本作の全容を指し示している。
時間ループものというのは本当に難しいジャンルで、簡単に辻褄が合わなくなるし伏線も必要だしと難易度が高い。
そこを見事に破綻なく、最高に面白い形で、すべてが丸く収まった本作は脱帽の出来であると言える。
更には過去作品へ繋がっていくことまで示唆して…非の打ち所がない。
またループものでは世界線という言葉が頻出するのだが、本作では世界線は一本だけであると考えられる。
世界線とは文字通り世界そのものであり、世界線が変わるということは、元の世界線は救われないということになる。
そうなってしまうと、ハッピーエンドが訪れても影を落とすことになるだろう。
だがそこは、さすが堀井雄二氏といったところで、度々仲間たちが「そういえば前にもこんなことが…」という言葉を発する。デジャヴ的な感覚だ。
つまり世界線が変わっていないことを示していて、ドラクエ11の世界では世界線は一つで、過去を変えれば未来も変わるというハッピーエンドに影を落とさないように工夫されている。
ただ単純に面白そうだからと時間遡行に手を出したわけではなく、しっかり世界観を肉付けした上で行っているため、非常に良くできていると感じた。
総評
後々自分で見返したときに分かりやすいように、総評には5点評価で何点だったかを書いていこうと思う。
評価はクリア、もしくは断念した時点でのものになる。
ということで、こちらのゲームの評価は……
4.5点!
シナリオ、バトル、システム。すべてドラクエの中で最高水準だったと言える。
特にシナリオは出色の出来なので、なんか布教したくなった。
ただ不便な部分が無いわけではないことなども加味して満点ではなかった。
あとがき
今回もXbox GamePassでのプレイ。
スイッチでも実は持っているのだが、やはりグラフィックを最大限楽しみたいので折角ならとPC版をプレイした。
前回から間が空いたのは、当然ボリュームがとんでもなかったから。
ドラクエ11だけしかプレイしないというスタイルではないため、余計に時間がかかってしまった。
個人的に驚いたことは、NPCテキストがとんでもなく膨大なことだ。
以前NPCテキストを担当したことがあるのだが、この量を書かされたらと思うとめまいがする。
イベントごとにタイムラインで整理して、それぞれキャラ付けして、配置して、あれしてこれして……実は意外なほど面倒だったりする。
昔のドラクエなら「ここはアリアハンの町です」とかシステム的なことを言って、イベントが起きれば情報を細切れにしてそれぞれに与えてやれば良かったが、本作はそれぞれある程度キャラ付けがされているのが凄い。
酒場で「お酒がうまいぞい」みたいな、そりゃそうだろうよみたいなやつはどこにもいなかった。
僕が最初そういうシステム的なテキストを提出した時も「そんな人間現実にいないだろ」って、怒られたなあ…。
「ここは○○の町です」というのにも、町の復興と絡めたり一手間かけている。
このNPCを作った方々に敬意を評します…。