逆転裁判6 &DLC
ゲーム概要
クセの強い登場人物が楽しい世界で弁護士として法廷バトルを繰り広げるADVゲーム。
本作はそのナンバリング6作目。
逆転裁判シリーズはファンで、前作である逆転裁判5も記事にした。
今回は逆転裁判5から良くなったポイント、悪くなったポイントも交えてシステム、シナリオ、DLC、まとめという観点で書いていく。
システム
まず良かった点として、前作である程度改善されたADVゲームとしてのシステム面だが、今回も嬉しい変更があった。
それが「全部スキップ機能」だ。
前作までは既読部分はスキップが可能だったが、今回からは未読部分でもスキップができるようになり、冗長な部分を自分のペースで読みすすめることができるようになった。
また舞台がクライン王国に移ったことで霊媒にまつわる新要素も出てきて、適度に難易度が上がってやりごたえも増した。
(逆転裁判4からは臭いものに蓋でもするかのように、コントロールできなくなった霊媒という要素を消し去っていたため、成歩堂編が好きな人には嬉しいポイントだ。)
キャラごとにも推理方法が変わってくるため、過去一番遊びの幅が広がっていた。
悪い点としては、ロードの多さだ。
何かがあるたびに処理落ちのような動作になったり、数秒間静止画になってロードされたりと、グラフィックを無闇に豪華にしたことで快適性が損なわれてしまっていた。
プレイしていたのはNew 3DSで処理機能が向上していたのにこれだったため、通常の3DSだと更にストレスフルだったのではないかと思う。
その上、操作を受け付けない冗長なモーションを行うキャラがいたりもするので、ストレスが多く感じた。
シナリオ
逆転裁判5では、成歩堂龍一が一歩引いた「保護者」のような視点になってしまったために詰まらなくなったと書いた。
今回はその反省を踏まえてなのか、大胆に逆転裁判の顔である「成歩堂龍一」を中心に作品を展開している。
それが功を奏し、テキストが保護者としての成歩堂龍一ではなく、主人公としての成歩堂龍一に戻ったことで圧倒的に魅力を増した。
シニカルで、行きあたりばったりで、そのクセどんなピンチも不敵に笑ってなんとか切り抜ける成歩堂龍一だ。
その上で真宵ちゃんも登場してしっかり物語に絡んできて、戻ってきたんだ…という得も言われない感慨にふけった。
物語としても、倉院の里と王泥喜法介の生い立ちに関わる重要な事項を絡めつつ、全体で一本の流れになっていて、主軸がブレていた前作と違って読み進めたくなる力が強かった。
(4章は箸休めだったのでもどかしかったが、短めに調整されており考えられているなと感じた)
DLC
前作ではとても面白かったDLCだが、今回は一転して面白くなくなったと言わざるを得ない。
といってもクオリティが下がったわけではない。
矢張、御剣、真宵ちゃんといった成歩堂編の主軸となるメンツが揃い踏みで進むファンコンテンツとなっていて力が入っていることは伺える。
だが裏腹にやろうとしていることがチャレンジングで、それがほとんど裏目に出てしまっていることが要因だ。
DLCでやろうとしていたことは、簡単に言えばドラマだ。
より感情を揺さぶり、登場人物に魅力を覚え、同情するようにしている。
だがその手段が全く良くなかった。
その手段というのがキャラクター性やキャラ自身のクセ、生い立ち、伏線を「スキップ不可の冗長なモーションで表現する」というものだ。
実に頭の悪いパワープレイで、単純にプレイヤーが覚えるまで何度も何度も嫌になるまでみせるという手法をとってしまったためだ。
そりゃ覚えるだろう。毎度テレビCMよろしくスキップできないモーションを見せられ続ければ商品名を覚えてしまうように、どんなモーションだったかは覚える。
だが強制的に見せられ続けたとして、あなたはそれが好きになるだろうか?
否、多くの人は嫌いになるだろう。
事実としてACジャパンのCMはとあるタイミングで異常なほど流れたことがあるのだが、その際に「流れすぎ」というだけで苦情が絶えなかったそうだ。
このようにドラマに重きをおいているため、事件としても表面上は奇抜だが実はかなり堅実な作りだ。ギミックは使い古されたものに過ぎない。
つまり今作のDLCは新たな表現方法を模索する実験場として機能しており、その表現方法が失敗したため結果として残されたのは面白みの薄い謎解き、冗長でストレスの溜まる会話、でもファンサービス要素があるからプレイはしたいという真綿で首を絞められるような、徐々にストレスが溜まるくせにカタルシスのないコンテンツだ。
ドラマの部分に注力するという方向性を悪いとは言わないが、もっと象徴的なモーションをブレイクモーションのように一度だけ見せるとか、もう少しクレバーな表現方法を見つけてくれればと思う。
まとめ
■良い点
・より充実したスキップ機能
・成歩堂龍一を主軸にして蘇ったテキストの魅力
・主軸が明確になったことで面白くなったストーリー
・霊媒にまつわる新要素で広がった遊び
■悪い点
・処理落ちやロードの多さ
・DLCが面白くない
総評
後々自分で見返したときに分かりやすいように、総評には5点評価で何点だったかを書いていこうと思う。
評価はクリア、もしくは断念した時点でのものになる。
ということで、こちらのゲームの評価は……
4.5点!
理由としては、何より読み進めていて楽しかったことだ。
成歩堂龍一が主軸となり、テキストも保護者から主人公になり、魅力が蘇った。
ストレスの溜まるロードなどの問題はあって完璧とは言えないものの、前作と比較するとずっと好きになった。
反面、DLCでは苦肉の策のような表現方法ですべて台無しになってしまっていたので、もう少しADVでプレイするときの感覚を身につけて欲しい。
次回が作られるのか僕にはわからないが、霊媒を意図的に使えるようになった真宵ちゃんを武器にして逆転裁判7を作れれば絶対面白くなるとおもうので、なんとか頑張ってほしい。
あとがき
今回は成歩堂龍一を起点とした逆転裁判1~3の成歩堂編を思わせる面白さがあって、大満足だった。
そりゃ顔なんだから起点とするのは当たり前でしょ?と思うかもしれないが、逆転裁判4から開発はなんとか世代交代を出来ないかともがいていたのだ。
カプコンは昔からIPがある程度醸成したら主人公を変えたりシステムを変える傾向があって、半々くらいで失敗している。
例を出すと、バイオ4やロックマンエグゼなどは成功したが、デッドライジング2や逆転裁判4やモンハン3などは失敗して、後に原点回帰している
今回面白かったのは、世代交代というカプコンの博打を諦めてくれたのが大きい。
当然IPの寿命という観点でいく以上、世代交代をしなければ遊びの幅にも限界があるしキャラクターもマンネリ化すると思うだろう。
だがよく考えて欲しい。
コナンやワンピースは世代交代なんてしなくても、今もIPのトップランナーだ。
やってることも変わらないが、展開と新たな引き出しを創出しつづけてトップを走っているわけだ。
カプコンはそろそろ、IPには燃料さえ切らさなければ(つまり開発に能力さえあれば)半世紀だって売れ続けることを認識して欲しい。