末端ゲーム開発者のゲーム備忘録

末端ゲーム開発者がゲームを分析する目的でレビューを書いているようだ。

Call of the Sea

f:id:toraao:20211123024111p:plain

 


ジャンル :謎解きアドベンチャー

価格   :2050

プレイ時間:7~8時間程度

評価   :7


 Call of the Seaというタイトルに少し耳馴染みのある方もいるかもしれない。

それもそのはずで、本作はTRPGで昨今有名となったCall of Cthulhuクトゥルフの呼び声)のシナリオの一つである「インスマスの影」をモチーフとした作品だからだ。

ただ本作ではモチーフとして用いられているだけであり、クトゥルフの呼び声から得られるコズミックホラー的な要素はなく、アクション性もない。(ただし超常的な現象を目にすることはある)

システムは純粋な謎解きとアドベンチャーにフォーカスしているため、ホラーやアクションが苦手でも問題なく遊べる。

美しい南国の島を巡り真実を解き明かす

f:id:toraao:20211123030227p:plain

主人公の病気の解決策を探しに島へ旅立った夫が行方不明となることから本作は始まる。

主人公は夫を探すため島に降り立ち、夫が率いる探検隊の痕跡をたどりながら、遺跡の謎をときつつ先へと進んでいく。

しかし事態は次第に雲行きが怪しくなり‥‥‥というのが本作のあらましだ。

f:id:toraao:20211123030224p:plain

島のロケーションはセルルックアートで美しく彩られ、バカンスしたくなるほど素敵だ。遺跡の苔むした岩肌からは、ひんやりとした質感すら感じられ、謎解きの最中も目を楽しませてくれる。

 

しかし景色という魔法に足を取られたのか、ダッシュボタンを押しても遅すぎる移動はプレイ時間を重ねるほどに煩わしく感じるし、デフォルトの移動方法が使用機会のない歩きで、走るためにはボタンを押さなければいけないという部分もストレスが溜まる。

手帳システムで親切な謎解きと、その功罪

本作の特徴として、謎解きゲームとしては非常に親切な作りであるということが挙げられる。

筆者がプレイしてきた、いわゆる謎解きゲームと言うと、手に入れたアイテムをどこに使うか悩んだり、壁に描かれた意味深な記号を念の為メモしたり‥‥‥といった形で意図的に不親切な印象なのだが、本作ではそういった部分をすべて手帳システムによって簡素化している。

謎解きに必要な情報は調べたときに手帳へそのまま記載され、アイテムを拾えば自動で手帳に挟まり使うべき場所を調べれば自動で使用される。

f:id:toraao:20211123030218p:plain

目の前にある謎を解くのに必要な情報は手帳に記されている。

逆に記されていなければ、謎解きに必要な情報が足りていないので、周囲を探索する必要がある。

この簡素さ初心者でも遊びやすい本作の魅力であるが、同時にいくつかの問題を生み出している。

 

まずは謎解きが簡単すぎるという問題だ。

謎解きというのは散りばめられた情報という””が、繋がって””になった瞬間に答えを閃き、カタルシスを得るものだ。だが本作では点と点が過不足なく手帳にすべて記されてしまうため、線に繋げる作業が簡単になりすぎているきらいがある。

また、その中で後半は難易度を上げる試みとして純粋なパズルや調べる対象をヒントなく意外な場所に配置するという方法を取っているが、はっきり言って自らの首を絞めるような仕組みでスマートではない。

謎解きの最中も気になる荒削りさ

本作は「Out of the Blue」というインディースタジオの処女作として世に出たと考えると、非常に良くできた作品だ。

ただ荒削りな部分も終始見え隠れしており、それは頻繁な処理落ち、テクスチャ読み込みの遅れ、少したどたどしいモーションや演出といった部分に現れている。

 

特に演出部分では、モノを拾い上げて調べる際の明かりが周囲のライトしか用意されてないという部分は惜しく感じた。

例えばメモ書きをズームして文字を読もうと思った場合、ライトから離れてしまって影ができ、文章がほとんど読めないということがあった。または対象的に、ズームすると周囲のライトの影響を強く受けすぎて眩しいくらいに光り輝いてしまうという場面もあった。

探索の中でモノを調べるという行為は没入感を生み出す上で重要な要素であるだけに、ここが少し調整不足であるのは改善したほうが良かったのではないかと感じた。

 

良い点

・南国の島や遺跡を彩どる、美しいセルルックのアートワーク

・謎解きに必要な情報が記録される手帳システム

賛否両論点

・手帳システムによって、かなり簡単な謎解きと後半の不親切さ

・やや人を選ぶ不思議なシナリオ

悪い点

・画質が中設定でも頻繁に起こる処理落ち、テクスチャ読み込み

・荒削りなモーション、演出まわり

・煩わしい移動

 

評価:

インディーゲームとは思えないほど表現が豊かな作品。美しいアートには心が奪われるし、謎解きと物語の2つの車輪はエンディングまで駆け抜けるには十分な力を持っている。しかし荒削りな部分も見え隠れし、謎解きは経験者からすれば、やりがいがないほど簡単かもしれない。

 

あとがき

今回もXbox game passにてプレイ。

謎解きは結構親しんでいるジャンルであり、それこそ中学生くらいからパソコンで脱出ゲームのフラッシュを漁ったり、SCRAPなどのリアル脱出ゲームや謎解きイベントに参加したりしている。ただそういったゲームをプレイしているから得意なのかというと、実はそれほど得意ではなかったりする。(好きなんだけどね)

未だに脱出ゲームはよほど簡単なゲームじゃないとヒントなしではクリアできないし、謎解きイベントもクリア率は10~20%くらいで低い。

そんな僕でも本作の謎解きは一回も詰まることがなかったので、恐らく脱出ゲームフラッシュで言えば難易度は★1の最弱クラスなのだと思う。

 

‥‥‥それにしても、謎解きゲームも進化したなあ。

フラッシュのころなんて画像を横矢印押して部屋を見回したり、画像を端から端までクリックしてアイテム探したりしてたのに、今はこんなに綺麗な島をテクテク歩けるなんて。

ゲームにも当然衰退するジャンルや思ったより栄えないジャンルというものがあって、例えば牧場物語みたいなゲーム的な農業・酪農ゲームって意外と栄えてなかったりして‥‥昔流行ったゲームが今も勢いがあるかというと、そうでもなかったりするのが難しい。(最近だとStardew ValleyとかMy Time At Portiaとか出てきて、盛り上がってるけどね)

その中で謎解きゲームという結構ニッチだと思ってたジャンルがリアルイベントでこんなに有名になったり、インディーゲームでこんな良作に恵まれたり、嬉しい‥‥。

 

今後はAIが発達したら、マーダーミステリーのゲームとかも出るのかな。

自分以外のプレイヤーをAIがやって、一人でも楽しめるマーダーミステリー‥‥胸が高鳴る。

ただ僕ではAIなんて分野どうにもできないので、なんとか世の中のすごい人達が作ってくれないかなあと待つばかりです。